<金口木舌>五輪精神の神髄


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 アスリートたちの力強いパフォーマンス、芸術的なまでの美しい技。幕を閉じたソチ冬季五輪は感動の連続だった。勝負とは別に人々の心を温めるドラマもあったのは、五輪ならではの光景だった

 ▼「浅田が泣きそうなときは、私もこみ上げてくる」。フィギュアスケート女子で銀メダルだった金妍児(キムヨナ)選手(韓国)は、6位の浅田真央選手について、こう語った。ショートプログラムのミスをフリーで必死に挽回、演技後に涙した浅田選手を思いやっての言葉だ
 ▼ジュニア時代からタイトルを分け合ってきた二人。世界の頂点を目指して厳しい練習に耐え、競い合ってきた。勝負の後は相手への敬意を忘れなかった。その姿に五輪精神の神髄を見る思いがした
 ▼クロスカントリースキー男子では、競技中にロシア人選手がスキー板を破損し、カナダ人コーチが自分の持っていたものと取り換えた。五輪関係者は「これこそが五輪の本質」とたたえた
 ▼スキー関係者の中には、こういったレースでは他のチームでも助けるのは慣例-とする向きもある。だが、たとえ当たり前の行為であっても、見る人にスポーツの素晴らしさを伝えたことに変わりはない
 ▼7日(日本時間8日)にはソチ冬季パラリンピックが開幕する。障がい者スポーツの冬の祭典にも国境を超えて選手たちが集う。人々が胸を熱くする多くのドラマを期待したい。