<金口木舌>「くとぅば銭使え」の精神を


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 「くとぅば銭使(じんじけ)え」という黄金言葉の向こうには、具志堅用高さんの顔が浮かぶ。独特の風貌と愉快な発言は唯一無二。ボクシング元世界王者はお茶の間でもフットワークを利かしている

 ▼14度目の防衛を果たせず、故郷沖縄のリングに沈んだのは1981年3月8日。引退後、うちなーなまりの言葉をジャブのように繰り出すタレントに転身した。県民は、はらはらしながら具志堅さんを見守った
 ▼具志堅さんを取材した折、魅力の源に触れた。「ぼくは自然体でやってきた。沖縄のことを思い、東京で頑張っている」。穏やかな語り口にてらいはない。自然体ゆえのなまりであり、和ませる言葉であった
 ▼白状するが、以前は具志堅さんが登場するたびテレビのボリュームを絞った。田舎臭丸出しの口調がやまとぅんちゅに笑われる気がして恥ずかしかった。30年前のことだ。劣等感混じりの卑屈な心根だったと、今になって悔やんでいる
 ▼テレビから目をそらしたくなる事態が進んでいる。言葉遣いの大切さを説く格言と懸け離れたNHK会長や経営委員の発言である。「口んかい食わーりん」の戒めを差し向けたい
 ▼発言後の国会答弁や言動を見る限り、当人たちは反省していないようだ。「人を食っている」というべきか。公共放送の信頼性回復はままならぬ。「くとぅば銭使え」の精神を取り戻す時ではないか。