<金口木舌>3・11を忘れない


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 夜の海岸線を縁取る空撮写真を目にした時、胸が締め付けられるようだった。福島第1原発周辺の漆黒の闇に浮かぶ光。その視界の先には、大都会東京のきらびやかな光が見える(3月2日付朝日新聞)

▼最大の電力消費地・東京と、都心に電力を供給してきた福島-。3年前のあの日を境にこの二つの地域は、明と暗に引き裂かれしまった。写真がその厳しい現実を物語っている
▼2020年東京五輪に向けたインフラ整備が本格化すれば、被災地の復興が遅れるのではないか-。過日、那覇市で開かれた「3・11フォーラム」で登壇者の谷藤典男さん(岩手日報社編集局次長)は被災地の思いを率直に語った
▼岩手、宮城、福島の3県で災害公営住宅の建設は、計画の3%しか進んでいない。復興の遅れは何なのか。私たちは、政治は、東北の人々に十分寄り添って来れたのか。連日の震災特集報道に接し、複雑な心境の県民も多かろう
▼復興の遅れは被災地の人口流出を招いている。3県では震災直後より10万人が減った。古里に戻れない人たちが全国に26万人もいる。避難者が一日も早く帰還できるよう、それぞれのやり方、持ち場で後押しを続けたい
▼「忘れてほしくない」。被災地の切実な声、声なき声に思いを致したい。「3・11」から明日で3年。私たちも新たな出発点に立たされている。東北と共に歩もう。