<金口木舌>ヒマワリは〝希望の種〟


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 宮森小米軍ジェット機墜落事故が題材の映画「ひまわり」。今も変わらぬ沖縄の基地問題に多くが共感した昨年の上映は記憶に新しい。ここにもう一つ、福島県と全国を結ぶヒマワリの物語がある

▼「福島ひまわり里親プロジェクト」がそう。袋詰めしたヒマワリの種を希望者に購入してもらい、育ててできた種を福島に送り返してもらう。この種が同県内1万2千カ所で夏に花を咲かせる
▼東日本大震災後、地元の若手経営者らが始めた支援だ。興味深いのは新たな観光名所の誕生に加え、種から油を取ってエネルギーとして活用を図る最終工程までの一連の作業を福祉作業所が担うこと。「3・11」で失った働く場を違う形で創造した
▼2年半で全国の里親は延べ11万人。学校現場は特に熱心で865校を数え、年内にも3千校への拡大を見込んでいる。「想像以上」と事務局のNPO担当者も驚く輪の広がりだ。児童生徒らにはきっと思いやりの芽が育っていよう
▼中でも沖縄からの反響の大きさは特別で「共に頑張ろう、というメッセージの一文に基地被害で悩み続ける苦悩が見える」という。小さな種が実は、沖縄と被災地の絆ともなる
▼雇用、観光、教育、農地再生…さまざまな復興への一歩を形づくるヒマワリ。全国からの思いの結集が東北の人々の生きる力につながるよう、“希望の種”に水を与え続けたい。