<金口木舌>梅型か桜型か


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 野球評論家の張本勲さんが琉球フォーラムでの講演で、野球選手は「梅型」と「桜型」があると話した。任務と目的を指示すれば自分で工夫して伸びるのは「梅型」で、米大リーグのイチロー選手が代表格という

▼「桜型」は指導者が常に横にいて叱咤(しった)激励する必要がある。「桜切る馬鹿(ばか)、梅切らぬ馬鹿」というから梅の方が手間を要するようだが、桜は植えて5年は手を掛けないと大きくならないそうだ
▼人の多くは桜型ではないだろうか。先輩や上司に怒られたり励まされたりして仕事を覚える。ところで気になる統計がある。沖縄では就職後3年以内に仕事を辞めた大卒者が49・3%で、全国31・0%に比べて多い
▼短期雇用や中小企業が多い沖縄の労働環境もあり、契約満了や解雇などの会社側の理由に加え、いわゆる「ブラック企業」による退社も含まれるから若者の責任とは必ずしも言えない。が、職場になじめなかったという理由なら残念でならない
▼張本さんは、新人のタイプを見極めて伸ばす指導者の役割を説いた。民間の調査では、「将来こうなりたい」と憧れる上司や先輩が職場に3人いれば、新人が退職する可能性は低くなるそうだ
▼4月入社の新入社員の研修が各企業で始まっている。春はもうすぐ。初々しいスーツ姿が街で見られる。梅でも桜でも花を咲かせてほしい、新しい季節だ。