<金口木舌>プロ野球キャンプに見る地域力


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 2月の風物詩ともなる沖縄のプロ野球キャンプ。今年は海外を含め16球団が訪れ、経済効果80億円超、沖縄観光の目玉となる。名護市の日本ハムから始まり30年余、当初これほどの成長を想像できた人は少なかっただろう

 ▼というのも当時は、球場整備一つ一つが手探りで、花ブロックの外野フェンスにボールが挟まることもあった。時には「打撃マシンで直球を投げてもカーブになる」と苦情も。急ピッチの作業で電力供給が行き届かなかったという
 ▼そもそものスタートが冗談のような話だったが、「地域おこし」を旗印に内野スタンド、サブグラウンドなど着々と整備。官民挙げ街の受け皿も充実させた。この成功が過去最多の球団が訪れる現状への礎になったといえる
 ▼一方、県内離島で初のキャンプ地となった宮古島では、誘致の機運を高めたいと若手経営者らが企画した長嶋茂雄氏の講演会が、その運動に火を付けた
 ▼講演会当日。「温暖な気候は最高のキャンプ条件」と訴える長嶋氏。満員の観衆は大歓声でこたえる。プロ野球で島は活気づく-。島民の熱意は確信に変わり、2日後には行政も加わり新野球場建設に向けた組織が発足した
 ▼プロ野球キャンプ一つをとっても、地元の知恵や連携、行動力が見える。そこに暮らす人々のアイデアで地域は動く。そんな場面が各地で誕生することを願いたい。