<金口木舌>夢かなえる虹の橋


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 戦後十数年たったころ、首里に長期欠席の小学生がいた。担任が家を訪ねると、父親は病に伏し、母親は出稼ぎで不在。本人は縄でげたの鼻緒を編んでいた。おなかだけ膨れた妹弟は栄養失調だった

 ▼この話を聞いた元那覇市議の故・野崎文子さんは、厳しい境遇の子を救いたいと、地域の女性たちに呼び掛け「首里奨学母の会」をつくった。毎月豆腐1丁(当時10セント)を節約して奨学金に充てる。会員900人超が26年間で約280人を支えた
 ▼母親たちの熱い心を継ぎたいと活動しているのがNPO「にじのはしファンド」だ(16日付)。児童養護施設を18歳で巣立つ生徒の中には、実力があっても経済的理由で進学を諦める子も多い。その夢を後押ししようと、代表の糸数未希さんが同級生らと立ち上げた
 ▼原資は毎月1口千円の寄付。知人や親戚に声を掛けて始まった活動は、3年で300人にまで広がった。社員40人が入会した大阪の会社もある
 ▼これまで6人を支援した。給付額は一人一人相談して決める。バイトなど自立の機会を奪わないためだ。学生らは近況を毎月ブログに寄せ、一方通行にはしない
 ▼「おじさん、おばさんからの仕送りのようなもの。この千円は子どもたちを未来につなぐ千円以上の価値がある」と糸数さん。4月からは新たに5人が給付を受ける。夢実現へまた幾つもの虹の橋が架かる。