<金口木舌>車いすから見た街


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 新人記者だったころ、福祉団体主催の催しに参加し体験取材を試みた。アイマスクを着けて街を歩き、車いすに乗って那覇の街をチェックした

▼一緒に参加した先輩記者に車いすを押してもらうと、車輪は狭い歩道からはみ出しそうになった。段差だらけの歩道は前に進むのが困難だった。障がいがある方々の視線で見た街は、ちっとも優しくなかった
▼2006年に施行したバリアフリー新法は、公共交通や建築物が高齢者や障がい者に配慮した内容にするよう求めている。20年前に比べると、障がい者用トイレの設置、段差の解消など県内の建築物を見ても、確実に進歩した
▼しかし、まだまだ改善の余地はありそうだ。先日、オープンした那覇空港新国際線旅客ターミナルビルを、身体に障がいがある兵庫県の男性がチェックした。「県福祉の街づくり条例」に適合しても、多目的トイレの狭さなど当事者目線で見ると直してほしい箇所が出てきた
▼「いつかは自分も高齢者になる、という視点でケアをしてください」。医療関係の勉強会では、こんな言葉にはっとさせられた。高齢社会が到来し、いずれは家族や自分も車いすを使うかもしれない。その視点がバリアフリーの街づくりには必要だ
▼沖縄では、公園のバリアフリーを考える動きも出ている。だれもが外に出やすい環境づくりに向けて、声を出し合いたい。