<金口木舌>夏にも見たい奄美の子たち


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 甲子園のアルプススタンドでひときわにぎやかなのが沖縄勢だが、今年の1回戦は奄美の大応援団に勝ちを譲る。七回に1点返したときは甲子園中が沸き立った。声援を背景に大島っ子が意地を見せた春のセンバツだった

 ▼鹿児島県の離島から初めての出場となった大島高校。全校生徒は船と高速バスを乗り継いだ。関東在住の出身者は「生きているうちに出場できた」と喜び、バス10台を連ねて乗り込んだ。6千のアルプス席は埋まり、通路を挟んだ外野にもあふれた
 ▼沖縄と同様に野球が盛んな土地柄だが、甲子園は遠かった。有力な選手は高校進学で島を出てしまう。7年前に中学3年の選抜チームを編成して引き留めを図ったが、それも3年で消えてしまった
 ▼しかし「地元に残って野球がしたかった」と、県内外の強豪校からの誘いを断り、島から甲子園を目指す道を選んだのが現在の選手たちだ
 ▼鹿児島市までフェリーで約11時間の島には高校が4校しかない。遠征費用や実戦経験で大きなハンディを背負う。かつての沖縄のチームも味わったことだ。沖縄の指導者や選手たちは逆境をはね返し、毎回上位をうかがうほどに成長した
 ▼昨年12月に復帰60年の節目を迎えた奄美群島。初の甲子園は大きな記念になっただろうが、これに満足せず常連校になってほしい。島を愛する子どもたちを夏にも見たい。