<金口木舌>1円玉と向き合う春


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 外国に行くと面白い習慣に出くわす。アジアや南米で買い物する際、お釣りがあめ玉で返ってくることがある。小額硬貨の流通が少ないためだ

 ▼日本でも一円玉が足りなくなったことがある。消費税3%が初めて導入された1989年だ。端数での支払いが増えて全国的に不足し、政府は大慌てで増産した。関西の大学生協が代用の「一円札」を作ろうとして、国会で問題になったほどだ
 ▼さすがに今回の8%増税では動きが早かった。造幣局は2月から一円玉の製造を4年ぶりに再開した。97年の5%増税で一円玉の出番が減り、さらに電子マネーの普及もあって、休止していた
 ▼一円玉を作るコストは2~3円。近年は原料のアルミニウムが高くなっている。カナダは昨年、コストが額面を上回るとして一セント硬貨の流通を中止した。ユーロ圏も一セントと二セント硬貨の廃止を検討中だ。だが、1円でも安い品にしのぎを削る日本では、引退はまだ先だろう
 ▼郵便も封書82円、はがき52円となるため、2円切手が11年半ぶりに復活した。100円ショップも108円になる。1円単位の額とにらめっこする春だ
 ▼庶民は家計への負担を切り詰めようと必死だ。果たして政府は約束通り社会保障に使うのか、目を光らせていく必要がある。コインがあめ玉に代わる国と違って、一円玉が庶民へのムチに変わってはいけない。