<金口木舌>世代超え、つなぐ泡盛文化


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 最近、「秘蔵の26年物古酒」をいただく機会に恵まれた。喉ごしよく、米そのものを感じさせる、ほのかな甘い香りがある。翌朝の目覚めは爽快だった

 ▼仕事の打ち上げ、模合の席、仲間とのコミュニケーションなどに泡盛は欠かせない。とっておきの古酒をちびりちびりと味わうのもいいが、一般酒で大勢の仲間とにぎやかに飲むのもまた楽しい
 ▼ところが残念なことに、泡盛の年間出荷量は2004年をピークに9年連続で下がり続けている(27日付5面)。沖縄に限らず、若者のアルコール離れや厳しい経済環境が背景にあるという。泡盛を愛する一人として寂しさを拭えない
 ▼飲み過ぎや飲酒運転は絶対に許されないが、「酒は百薬の長」ともいう。正しく付き合えば、人生を豊かにするパートナーだ。もっと言えば、古酒は沖縄文化の華でさえある
 ▼泡盛マイスターの友人は古酒を振る舞う時、酒器も持参する。マイスターは「器も泡盛文化の一部だから、味や香り以外に見た目でも楽しみたい」とこだわりを語る
 ▼沖縄戦で100年を超える古酒がほぼ失われた今、親から子、子から孫へ受け継ぐ古酒造りは、何世代にもまたがる文化の復興という側面もある。泡盛を取り巻く環境は厳しいかもしれないが、だからこそ本来の味で勝負してほしい。そこには私たちが次代に残すべき文化も含まれているのだから。