<金口木舌> もう一つの人権問題


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 消費税増税に伴う値上げラッシュで気の重い年度末だが、あすからの新年度は気を引き締め、何とかフレッシュな気持ちで迎えたいものだ

 ▼増税のニュースに比べ、影が薄くなりがちなのは4月1日付の日本のハーグ条約加盟だ。条約は、国際結婚が破綻した夫婦間で、子どもの奪い合いが起きた際のルールを定めたもの
 ▼多くの米軍基地を抱える沖縄も無関心ではいられまい。米国人と国際結婚する事例が多いため、条約の対象になる子どもをめぐるトラブルの多発も予想される。沖縄からは、加盟後の影響を懸念する声が上がっていた
 ▼ようやくと言っていいだろうか。話し合いなど裁判以外の方法で解決を図るADR事業が、全国5カ所のうち沖縄弁護士会に委託されることが加盟直前に分かった。不安を抱える人が顕在化する中、沖縄に“窓口”ができることは、大きな前進だ
 ▼長年ケースワーカーとして、米軍基地から派生する女性問題に取り組んできた平田正代さんも注視してきた一人。「弁護士を立てる費用がない人も多い。いきなり裁判ではなく、まずは相談に行きやすくなる窓口が設けられたことはとても大きい」と評価する
 ▼ただ窓口設置は出発点にすぎない。子どもにとって何が望ましいのか。基地沖縄が避けて通るわけにはいかない“もう一つの人権問題”として、サポートの在り方を考えたい。