<金口木舌>「言い換え詐欺」に注意


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 世に出世魚というものがある。成長につれ、ハマチ→イナダ→ブリと名前が変わる。タイにも出世魚がいると作家の阿刀田高さんが書いている。〈一番小さいときがケイサツヨビタイ、次がホアンタイ、ジエイタイ、間もなく海外派兵もできる本式のグンタイになる〉

▼著書「詭弁の話術」で指摘したのが40年前。今まさに、自民党は改憲草案で「国防軍」への改称を掲げるまでになった
▼政府が武器禁輸の三原則を47年ぶりに撤廃した。国是の大転換なのに、閣議決定であっさりと変えてしまう始末。しかも「武器」を「防衛装備」に、「輸出」を「移転」に言い換える芸当はペテン師も真っ青だ
▼大戦中、大本営が敗退を「転進」に、全滅を「玉砕」にすり替えたことを思い出す。不都合な真実を隠し、国民の目をごまかすのは、権力者にはお手の物なのだろう
▼銀行に投入した税金を「公的資金」と呼び、消費税を「国民福祉税」に変えようとし、原発事故は「事象」と称した。戦争さえも今や「有事」との言い換えが定着してしまった
▼国家が聞こえのいい言葉を使う際は、疑ってかかった方がいい。問題の本質にふたをし、国民に不利なことをたくらんでいるのではないか、と。この国のリーダーがよく口にする「積極的平和主義」は、その最たるもの。世界の紛争に関わりたいとの魂胆が、衣の下に透けて見える。