<金口木舌>元世界王者に学ぶ


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 頑張っている人に声を掛けるとすれば、何と言うだろうか。「負けないで」「まだいける」。周囲の応援がいくらあっても、本人の心が折れてはいかんともしがたい

▼いつまでも折れなかった男、元世界ボクシング協会(WBA)スーパーフライ級王者の名城信男選手が、ついに引退を表明した。2度の王座奪取、一度は引退表明してからの世界再挑戦、「諦めない男」がリングを下りた
▼2006年にデビューから8戦目で戴冠したのは当時の最短タイ記録。その後、陥落から王座復活、10年に無冠となった。11、12年には連続して王者に挑んだが、残念ながらはね返された
▼持病のぜんそく、対戦相手が亡くなる事故など、名城選手が乗り越えた壁は幾つもある。復活に懸けたのは周囲の応援もあるだろうが、何よりも本人の諦めない気持ちがあったからではないだろうか
▼父親が本部町出身という縁で、現役時代は本部町や名護市で合宿し、沖縄を「第2の故郷」と呼び、本部町の人々も盛んに応援した。今後、母校・近畿大のコーチとして、後輩たちに名城流の「諦めない気持ち」を伝えてほしい
▼新年度が始まって1週間。慣れない場所や仕事に戸惑い、心が折れかける時もあるだろう。そんな時、沖縄にルーツを持つ元王者から学ぶことがある。目標を持ち、突き進む-。ボクシングに限らず誰にでも共通する心の在り方を。