<金口木舌> 後進へのバトンタッチ


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 沖縄ブランドとして42年間親しまれてきた飲料メーカーが先日、年内での営業譲渡を決めた。企業の発展を意図した合併・買収もあるが、今回の地元資本の幕引きは理由の一つが後継者問題だ。この問題の深刻さをあらためて見る思いがした

 ▼復帰後起業した経営者らが世代交代の時期を迎えつつある。帝国データバンクの調査では、2012年段階で後継者不在の企業が全国で唯一、8割を超えるのが沖縄だ
 ▼経済界もこの課題の克服には熱心だ。県経営者協会は昨年開いた後継者育成セミナーをことしも5、6月をめどに再び開く。那覇商工会議所も新年度から県事業引継ぎ支援センターを設置する
 ▼県経営者協会の山城勝常務理事は「後進へどうバトンタッチするか、中小企業の最も関心が高いテーマだ」と語る。競争激化の中、たとえ親族への事業継承でも簡単ではないという
 ▼現在2代目が経営する中城村の基礎工事業者は26年前、創業者の父から引き継いだが、従業員は当時の倍以上の約70人を抱える。営業力と熟練技術者が企業力の両輪だといい、3代目を想定する長男にもその教えを徹底する
 ▼定年を迎えた従業員の再雇用を拡大する県内大手小売業もある。店舗責任者として後輩の手本となる人材もいるという。蓄積された知恵や経験をどう生かすか。経営者ならずとも関心を持たざるを得ないテーマだ。