<金口木舌> 東京の沖縄コミュニティー


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 東京の県人におなじみの「おきなわの声」という機関紙がある。タブロイド判4ページをびっしり埋めるのは東京での沖縄関係行事や地元2紙の報道などだ。昭和の時代から変わらないスタイルで創刊36年目に入った

 ▼沖縄研究の第一人者、外間守善さんは「おきなわの声」をこう評した。「『東京の沖縄』というコスモス(宇宙)は望郷の場だけではない。離れているがゆえに見える沖縄の過去、現在、未来がそこに集約されているように思われてならない」
 ▼遠くにいればこそ見える沖縄を凝視し、熱愛し、その将来を気遣う在京沖縄人の1人が金城驍(たけし)さんだろう。3月まで14年間、同紙編集長を務めた
 ▼宮古島で生まれ、進学のため上京。定年退職後に6代目編集長となり取材、編集をほぼ1人で担った。「沖縄コミュニティーの情報発信が僕の役目」と話すように沖縄関係の催しには必ず、熱心に取材する金城さんがいた
 ▼沖縄戦末期、敵機が自宅に落ちたが間一髪で助かった。「それが僕の平和への原点」という金城さん。80歳でなお故郷を思い、県人のつながりを大事にしている
 ▼過日、都内で開かれた金城さんの傘寿を祝う会にはおよそ百人が駆けつけ、誰もが沖縄を愛する先輩への敬意を口にした。このつながりがある限り、金城さんが大切にする沖縄コミュニティーの温かさはこれからも続くだろう。そう感じた宵だった。