<金口木舌>表に出てきた教育勅語


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 坂本龍馬が暗殺直前に書いた手紙の草稿が見つかった。場所は東京の女性宅のちゃぶ台下というから面白い。歴史のロマンは意外な所に転がっていた

 ▼一方、こちらの発見はどうだろう。「教育勅語」の原本だ。文部科学省の保管庫で2年前に確認していたのに、なぜこのタイミングでの発表なのか。最近、再評価する動きがあるだけに、いぶかしい
 ▼戦中派の方なら「チンオモーニ ワガコーソコーソー」(朕(ちん)惟(おも)フニ我カ皇祖皇宗)と意味も分からぬまま丸暗記させられた経験をお持ちだろう。国民を戦場に駆り立てた軍国主義教育の象徴だ
 ▼戦前は全国の学校に配られ、天皇・皇后の写真(御真影)と共に奉安殿に納められていた。儀式の際は「天皇陛下万歳」の後、白手袋の校長が漆塗りの箱から恭しく取り出し朗読した。子どもたちは頭を下げたまま聞き、「ギョメーギョジ」(御名(ぎょめい)御(ぎょ)璽(じ))の最後の下りに、ほっとしたそうだ
 ▼親孝行や夫婦の和、勉学なども記しているが、神髄は「一旦(いったん)緩急アレハ義勇公(こう)ニ奉(ほう)シ」と、天皇のために命をささげよとの勧めだ
 ▼下村博文文科相は「中身そのものはまっとう」と教育勅語を肯定する。道徳の教科化、教科書選定や検定への国の介入-。「日本を取り戻す」を掲げた安倍政権が戦前の大日本帝国へ向け急旋回している気がしてならない。国家の魂胆は国民の目で発見するしかない。