<金口木舌>心豊かな老いを


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 ミス(美寿)きたなかぐすくの3人が昨年、県庁に副知事を訪ねた日のことだ。全員80歳台だが、年齢を感じさせず、生き生きした表情だ。長寿の秘訣(ひけつ)を聞かれ、ランの栽培、料理、友人とのおしゃべりと答えた

 ▼市町村平均寿命で北中城村の女性が日本一に輝いたという報告が目的だった。副知事の質問をよそに、3人で会話が弾む場面もあった。朗らかで飾らない立ち居振る舞いが笑いを誘った
 ▼沖縄が長寿県日本一だった時代、マスコミが描いた元気な「沖縄のおばぁ」を体現している。3人の共通点は友達付き合いがあり、家庭菜園で体を動かしている生活習慣だ
 ▼元気な高齢者がいる一方、生活習慣病を患う県民が増え、健康状態は悪化の一途をたどっている。2040年までに長寿日本一を奪還しようと、71団体でつくる「健康長寿おきなわ復活県民会議」が発足した
 ▼県民ぐるみの健康づくりに気勢が上がる。目指すは、健康寿命の延伸だ。介護されず自立して生活できる期間の寿命を示す。厚生労働省の調査によると、健康寿命と実際の寿命の差は、女性が全国平均で12・68年、男性が9・13年ある。病と闘いながら暮らす余生は長い
 ▼認知症や人工透析の増加、終末期医療の在り方など高齢者ケアをめぐる課題は多い。これらの課題と向き合いながら心豊かに暮らせる環境について社会全体で考えたい。