<金口木舌>終わらない戦後


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 肉親の遺骨を探すひたむきな姿を見るにつけ「今度こそ奇跡を」と願う。沖縄戦終結から69年が経(た)ったが、遺族の戦後は終わらない

▼戦死した兄の遺骨を探すため先月来県したのは、北海道千歳市遺族会会長の渡辺鶴雄さん(77)。沖縄戦遺骨収集ボランティアの具志堅隆松さんの協力で戦死した可能性が高い那覇市首里の傾斜地を探し、骨の一部を発見した。「兄を連れて帰りたい」。ぜひ、念願をかなえてほしい
▼一方、69年ぶりに“対面”できた方もいる。田畑耕三さん(享年33)の遺族だ。戦死した父の遺骨と対面しハンカチで涙を拭う子どもたちの姿が本紙8日付紙面で報じられていたが、胸を打たれた
▼DNA鑑定なしには田畑さんの遺骨と判断できなかっただろう。これまで沖縄戦の戦没者4人の遺骨がDNA鑑定で身元が判明し、家族の元へ戻った。非常に喜ばしい。ただ、もっと精力的に取り組めないものか
▼私事で恐縮だが、父の兄2人が沖縄戦で亡くなったが遺骨は見つかっていない。わが子を立て続けに失い、戦後の祖父母の悲しみはどれほど深かっただろうかと思う。癒やされぬ悲しみを抱えた遺族は、県内外に大勢いる
▼県議会は3月定例会で「沖縄戦没者遺骨のDNA鑑定実施」の意見書を可決した。遺骨を一日でも早く家族の元に戻すべく、DNA鑑定の仕組みをしっかり活用したい。