<金口木舌>人や特産物を育てる地域の輪


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 紙面を彩った入学式の話題をご覧になっただろうか。数年ぶりに仲間が加わった竹富町の船浮小中学校や本部町の水納小、国頭村の複数の小学校では唯一の新入生を地域で歓迎した

▼座間味村内の新1年生にはリュウキュウマツで製作した机といすがプレゼントされた。子の成長を願う住民らの気持ちが伝わる。一方、県立農業大学校の入学式では若者らの目に光があった
▼年齢はもとより、東京、与那国、宮古島、伊是名、糸満など出身もさまざまだが、沖縄の農畜産業の担い手になりたい、地域を振興したい、と意欲は頼もしい限りだ
▼同校と地域のつながりの一例が、本部町健堅の在来種「キンキンゴーヤー」の復活だろう。通常よりも大きいがゆえに流通せず廃れたとされるが、数年前、残っていた種から当時校長だった本部町の平良武康副町長らが交配を繰り返し、本来の特徴に近づけた
▼復活の効果は、一農作物の生産にとどまらない。区の農園では植え付けや収穫を民泊の体験メニューとし観光の起爆剤にと狙う。ことしから食品メーカーとも連携、6次化へ向け商品開発にも取り組む
▼農園で最も懸念されていた配水施設は行政の支援で形が整う。一つの特産物で官民の輪が広がる。子どもたちや農畜産物、いずれも地域が手を取り合うことで育つのだろう。その環境づくりに地域おこしのヒントがある。