<金口木舌>政権とゴルフ


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 「ゴルフに逆転ホームランは存在しない。このゲームの勝敗は『自滅』によって決まる」と言ったのは、ゴルフの腕も一流だった、米大リーガーのベーブ・ルースだ。うなずく方も多いだろう

▼日本ではゴルフがゲームではなく、政権の“自滅”を招いたことがある。2001年2月の米原子力潜水艦と愛媛県立宇和島水産高校の実習船「えひめ丸」の衝突事故だ
▼実習生ら9人が犠牲になったこの事故で、当時の森喜朗首相は一報を受けた後もゴルフを続けた。国民の反感を買って支持率が低下し、政権は4月に退陣に追い込まれた
▼安倍晋三首相は森内閣の官房副長官だったから初動の誤りが致命傷になることは当然、熟知していよう。なのに首相は先日、熊本県での鳥インフルエンザ発生を知りながらゴルフを続けた。なぜ、直ちに中断し、陣頭指揮を執らなかったのか不可解だ
▼今回は人への感染リスクが低いH5型だったものの、中国では今年、多くの死者が出たと聞く。渡り鳥の影響などを考えると日本も油断できない。菅義偉官房長官は、国民に無用な不安を与えないことも危機管理の一つと首相をかばうが、国民は納得しまい
▼安倍氏らは東日本大震災での民主党政権の対応を批判し、危機管理を政権の重要課題と位置づけていたはずだ。最善を尽くし被害を最小化する危機管理の要諦を、置き忘れていないか。