<金口木舌> 肝心と命の重み


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 漁港内に新基地建設に向け、くいが打ち込まれた。2004年4月19日、名護市辺野古漁港で住民らと那覇防衛施設局職員(当時)がにらみ合っていた

 ▼「将来の『平和な社会』がかかった出発の日だ」。市民らでつくる「命を守る会」の金城祐治代表は座り込み闘争の初日にこう語った。あれから10年の節目を迎えた19日。辺野古の海は一見穏やかだった
 ▼しかし普天間飛行場代替基地の建設計画は、L字型やV字型、「最低でも県外」、埋め立て承認と、姿形を変えながら進む。海岸に立つと、さすがにサンゴの海の緊迫感が伝わる
 ▼辺野古とは全く関係ないが、かつて福田赳夫首相は事件対応で「一人の生命は地球より重い」と述べた。福田氏に言わせれば命の重さは当然、沖縄も本土も同じだろう。しかし今日、永田町から聞こえるのは基地反対運動を取り締まれとの“抑圧のススメ”
 ▼中央の政治家には県民の命や安全は二の次か。新基地阻止の道半ばで他界した先人もこの横暴さには天国でさぞおかんむりだろう。一方でお年寄りが口にする「子や孫のために」との言葉には、命を慈しむ沖縄の肝心(チムグクル)を感じる
 ▼肝心と知恵で辺野古での流血事態を何としても避けたい。この国の為政者からも宜野湾、名護両市市民と本土住民の命は「等しく地球より重い」との言葉を聞きたいものだ。