<金口木舌>病院と文化活動


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 病院ロビーが小さなコンサート会場に変わった。患者と医療スタッフが肩を並べ、ピアノ生演奏に聞き入る。県立南部医療センター・こども医療センターが過日、ピアニストの北順佑さんを招き開いた演奏会のことだ

▼同医療センターは日頃から音楽家の慰問公演を開いているが、今回初めて人の出入りが多い外来時間帯に設定した。病院関係者は「静かに!」との苦情が出ないか、気をもんだ。それは杞憂(きゆう)だった。集まった約100人の笑顔がそれを物語った
▼今後は慰問公演の受け入れ窓口を一本化し、「親しまれる病院」を目指して地域住民への院内公演の広報も強化するという。音楽で患者の満足度を高める発想といえようか
▼しかし、音楽にはより大きな波及効果が期待できよう。病院の文化活動の先駆けは長野県の佐久総合病院だ。1947年から病院祭を開催し、近年は来場者が1万人余に上る。院内の合唱、吹奏楽も盛んで地元のホールで定期公演を開いている
▼文化活動の効果は「癒やし」にとどまらない。病院と住民との距離感が縮まり、病気の早期発見・治療にもつながる。感動の共有は患者と病院の信頼醸成にもプラスのようだ
▼南部医療センターの医師は「治療の先には音楽に触れる楽しみ」があることが、闘病の支えになると見る。患者の身も心も癒やす、人間味あふれる病院が増えてほしい。