<金口木舌>失われた宝の回復


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 贅(ぜい)の限りを尽くした、という表現が当てはまる。25日から那覇市歴史博物館で特別公開されている琉球国王の「玉冠」のことだ。王の権力を誇示するだけでなく、優れた技術を今に伝える

▼「玉冠」は国内で唯一残るものという。というのは、もう一つあるが行方が分からないからだ。写真だけなら見ることができる。米連邦捜査局(FBI)の盗難美術品データベースだ
▼データベースには玉冠だけでなく儀礼用の装束「皮弁服」、歴代王の肖像画「御後絵(ウグイ)」、合わせて13点が掲載されている。2001年に登録されたが、発見につながる手掛かりはない
▼これらの美術品は沖縄戦直後の混乱の中、米軍関係者が「戦利品」と称して持ち去った。返還運動に取り組むNPOの調査で、多くの「戦利品」を転売した情報将校も特定されている
▼米軍の強奪といえば、普天間飛行場に代表されるように、県民の生活の基盤である土地を奪った点も挙げられる。今も続く基地被害は目に見えるが、なかなか日の当たらない文化の収奪も現在まで続く戦争被害の一つだ
▼玉冠などは王朝文化が到達した技術の最高点であり、大陸の美術・工芸を発展させ、表現した当時の人々の精神も伝えるものだ。ウチナーンチュの魂も込められた宝の返還は沖縄の誇りを回復することでもある。失われた宝が一つでも見つかることを期待したい。