<金口木舌>春を待つ


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 全ての人が尊重される世の中であるように-。そんな願いが込められた雑誌が昨年9月に創刊された。雑誌「はるまち」だ

▼生活保護を受給している人たち、かつての受給者たちの素顔が見えるよう内容を工夫し、編集している。手元にある創刊号から3号はフルカラーで洗練されたレイアウトが印象的。栄養確保のためのレシピ、家計簿の付け方など、ためになる生活情報が満載だ
▼創刊号の表紙は、生活保護を受けた経験のある若者2人が笑顔で砂浜を歩く写真で飾った。紙面では生活保護を受けて育ち、無料学習塾で進学を目指し、NPOに就職した実体験を自然体で語っていた
▼社会活動家の湯浅誠さんが創刊の仕掛け人だ。編集は、生活保護を受けたことのある若者や支援者約20人が関わっている。悩みや生きがいなど等身大の姿を見せることで、信頼の基礎を築こうとの願いを共有しているようだ
▼数年前、高収入の芸能人の肉親が生活保護費を受けているとして、芸能人が報道でたたかれた。不正受給は全体の0・5%だが、あたかもそれがまん延しているかのように感じた方も多いだろう。やむにやまれず保護を受ける人たちが肩身の狭い思いをする社会は息苦しい
▼雑誌の名前には「春を待つ」との意味が込められている。生活保護受給者の春の訪れ、自立をいかに後押しするか。社会全体で考えたい。