<金口木舌> 桜は春?ホタルは夏?


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 クイズです。「次の花が咲く時季は? 桜、ヒマワリ、コスモス」。それぞれ春、夏、秋との答えが多いかもしれない。だが他府県ではそうでも、沖縄の花暦は違う。3種とも1~2月に同時に見られる

 ▼桜は入学のころテレビCMに頻繁に登場し、コスモスは秋桜の異名があるので、春や秋の印象を持ちやすい。全国一律の情報による刷り込みはなかなか拭えない
 ▼ホタルについても同様だ。水辺の生き物と思いがちだが、日本にすむホタル約50種のうち水生はわずか3種。ゲンジボタル、ヘイケボタル、クメジマボタルだけだ。沖縄には久米島を除き全て陸生しかいない。森や畑などの湿った場所でカタツムリやミミズを食す
 ▼季節も夏だけではない。最盛期は4~5月だが、11月まで見られる。目の前の生態を知らずに、いかに固定観念で捉えていたか、先日、ホタル観察会で教わった
 ▼夜8時前の那覇市の末吉公園。ピカッピカッと点滅するクロイワボタルと、ずっと光ったまま飛ぶオキナワスジボタル、さらに地面で光を放つ幼虫も加わり、遊歩道と両側の斜面で幻想的なショーが繰り広げられた。子どもも大人も歓声を上げた
 ▼末吉公園では数年前から一部の街灯を消すことでホタルが戻ってきたという。沖縄の自然は多様性に富む。全国基準ではなく、地域独自の物差しで足元の自然を知り、価値を見詰め直したい。