<金口木舌> 百貨店に息づく文化


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 流行の花柄をあしらったシャツやパンツが画面に表示され、品数の多さに目を奪われる。スマートフォン向けに無料通話アプリを提供する「LINE」が昨年末から3月にかけて「LINE MALL」を開いた。買い手が厳選した人気ブランドの服が気軽に手に入り魅力的だ

 ▼LINEの利用者は約4億人を突破しており、MALLも急拡大が予想される。大型駐車場を備えたスーパーに加え、今やネット通販も生活に定着しつつある。その陰で苦戦を強いられているのが百貨店だ
 ▼県内の老舗百貨店「沖縄三越」が今秋、約57年の歴史に幕を下ろし閉店するという。国際通りのシンボルとしてにぎわった時代を知る一人として閉店は寂しい限りだ
 ▼幼少時代「街へ出掛ける」と言えば、沖縄三越など那覇の街が目的地だった。ワンピースを着た母に手を引かれ、店内のレストランでパフェを注文し、贈答品などを買った光景を思い出す。非日常を味わえるわくわく感があった
 ▼洗練された品々から流行を発見できるのが百貨店の持ち味だ。店内のカフェは高齢の女性客の利用も多い。お茶を飲んで、平和通りへ足を運ぶ流れもあり、独特の文化が息づいた
 ▼1999年の沖縄山形屋閉店に続き、沖縄からまた一つ百貨店が消えようとしている。“百貨店文化”の喪失は、何か重要なことを暗示しているように思えてならない。