<金口木舌>私はだまされない?


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 30年前、詐欺に遭いかけたことがある。東京での学生時代、アパートに作業服の男が訪ねてきた。「消防署の方から来ました。消火器の確認です」。置いていないと告げると、初期消火の重要性を説き、使いやすいスプレー式を勧められた。1本7千円。持ち合わせがなく、翌週の再訪をお願いした

▼2週間後、新聞を見て冷や汗をかいた。消火器詐欺が横行とある。当時、新手の手口だった。日頃は訪問販売を警戒していても、あの時だけは身なりと巧みな話術で信じ込んでいた
▼振り込め詐欺のニュースを見ると、なぜだまされるのかと不思議に思う半面、自身も被害に遭いかけた苦い経験を思い出す。「自分だけは大丈夫」とは言い切れない
▼最近は数字選択式宝くじ「ロト6」の詐欺が増えている。当せん番号を教えるとの電話がかかり、「明日の新聞で確認して」と言われる。当たっているので信用して高額を振り込んでしまう。実は前日の夕方6時45分に抽せんし、番号はインターネットで公表されている
▼県警によると、県内のロト6詐欺被害は昨年1年間で6件・1523万円、ことしは既に3件・1220万円に及ぶ。予防のため、本紙でも今月から当せん番号の欄に注意を促す文を掲載している
▼「自分だけはだまされない」との思い込みは危うい。「自分だけもうかる話はない」と言い聞かせておきたい。