<金口木舌> コピペ時代の情報公開


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 コピー・アンド・ペースト、略してコピペ。ネットで見つけた文章の一部をマウスやキーボードの操作でつまみ、新たな文章を仕立てる。手軽なことこの上ない

 ▼「パソコン時代の文章作法」がネット上で幅を利かせている。編み目のそこかしこから拾い集めた原文に、切り貼り作文術を施したモザイク文章は冗舌で、読む者を惑わす危うさがある
 ▼ネット社会の恩恵にあずかりながら、食い足りない文章もある。首相官邸ホームページに載っている閣議と閣僚懇談会の議事録は、官僚仕立ての説明文の切り貼りといった体裁。素っ気ない文面からは国の政策決定過程が見えてこない
 ▼4月22日に始まった議事録公開。政府は「閣議の透明性向上」や「国民への説明責任」を掲げる一方で、情報公開法でいう「不開示事由」に該当する事項は除くと条件付けた。問題となるのは沖縄である
 ▼基地に絡む重大な閣議決定はこれまでもあった。今後も県民の生命・財産に関わる閣議決定がなされるだろう。その時の閣僚発言が「不開示」となれば「説明責任」は果たされない
 ▼コピペで一部を見せることで肝心なことは隠す。そんな政府の思惑が閣議議事録の公開に潜んではいないかといぶかる。閣議はもちろん、そこに至るまでの政策決定過程を明かしてほしい。マウスの操作よろしく情報の「削除」「切り取り」では許されぬ。