<金口木舌>「丁寧説明」


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 本来の意味とは違う語法が永田町にはある。「善処する」は「何もしない」との意。「必要な時に必要な措置を講じる」も同様で「必要な時」は訪れないから結果として「何もしない」。「近いうちに」は「永遠にない」に等しいとか

 ▼安倍晋三首相の「丁寧に説明していきたい」もその類いか。集団的自衛権の憲法解釈変更について「国民に丁寧に説明していきたい」と発言した。そういえば特定秘密保護法も、靖国参拝の時も「丁寧に説明」を繰り返していた
 ▼昨年3月、米軍普天間飛行場の移設先とされる名護市辺野古沿岸の埋め立てを県に申請した時も「丁寧に説明していかないといけない」と語っていた
 ▼しかし安倍政権が、県民の7割が反対する辺野古移設について、県民に丁寧に説明した形跡はない。代わりに県出身・選出の自民党国会議員に公約を翻させ、予算と引き替えに知事に承認の判をつかせる、どう喝と懐柔が際立っただけだ
 ▼「丁寧に説明」を永田町用語で変換すると「国民、県民が何と言おうとやりますからよろしく」となるのだろう。説明を尽くした上で民意を問い、実行するという民主主義の手法をすっ飛ばす乱暴さだ
 ▼国のかたちを変え、国民の生活を変える重大な政策決定を行うのに、説明不足の強硬策が通用するのだろうか。誤変換も甚だしい永田町用語に民意はついていけない。