<金口木舌>高校生の熱い戦いに期待


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 1995年の全国高校総体、女子ハンドボール会場は、異様な熱気に包まれていた。県代表の浦添が対戦するのは、春の全国大会を制し、優勝間違いなしといわれた福井商業。終了の笛が鳴るまで1点を争う激戦に、2回戦とはいえコートの周りに多くの人が集まった

 ▼平幕が横綱を土俵際まで押し込んだ、という試合内容だった。惜しくも浦添は1点差で敗れたが、印象的だったのは終了後の選手たちの笑顔だ。悔し涙を流した選手も、チーム全員で記念撮影するころには充実感あふれる顔で前を向いていた
 ▼ことしもそんな場面は見られるだろうか。全国の舞台を目指す県高校総体は、31日から本格的に競技が始まった。28競技で9479人が代表の座を懸けて持てる力を出し尽くす
 ▼高校野球にも通じるものがあるが、負ければ終わりの一本勝負。長いシーズンを通して勝敗を決するプロスポーツと違い、1試合ごと、一瞬にかける真剣さが、高校生をはじめとするアマチュアスポーツの魅力だ
 ▼勝者だけでなく、先の浦添のように敗者にも感動の物語はある。ことしの参加チームにも1人で練習する選手、数年ぶりに復活したチームなど多くの高校生が勝敗を超えた部分でそれぞれの物語を紡ぐ
 ▼夏に向け、いよいよ本格的なスポーツシーズンが始まる。長梅雨を吹き飛ばすような爽やかな物語を期待したい。