<金口木舌>沖縄の人手不足


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 何人かの県庁職員から興味深い“ぼやき”を聞いた。かつて若い女性の花形だった短期雇用の秘書職への応募がめっきり減った。技術系職員の内定辞退も相次ぎ、採用に苦労しているそうだ

▼民間でもコールセンター業は人繰りに苦しむ。土木建設業は専門職が足りず工期に影響を及ぼしている。人手不足は沖縄にも波及しているのか
▼デフレ下で、多くの企業がパートやアルバイトなどの非正規雇用で人件費を抑えてきた。沖縄はさらに深刻だ。非正規が44・5%と全国一高く、働く人の半分近くが安い人件費で不安定なまま働いてきた
▼全国的にも「デフレの勝ち組」と呼ばれる低価格ビジネスを支えているのは非正規の労働力だった。低賃金にもかかわらず正社員並みのノルマや重労働を課される「ブラックバイト」なる状況もある
▼しかし今、厳しい労働環境に「ノー」を突きつける動きが出てきた。複数の飲食チェーンで人が集まらず店舗閉鎖に追い込まれた。渋谷ではファストフードの時給1500円を求め、店のマスコットのお面や牛丼の形の帽子の一団が街頭行動をした
▼安倍政権は“残業代ゼロ”制度を打ち出すなど労働環境の改善には冷ややかだ。非正規のまま賃金がやや上向く程度では人々の不満は解消しまい。昨今の人手不足を、雇用の根本的見直しのきっかけにしたい。人材あっての未来なのだから。