<金口木舌>良い土壌に種まきを


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 石や茨(いばら)の上に落ちた種は成長しないが、良い土地にまいた種は、30倍から100倍もの実を結ぶ。新約聖書の例え話だ。よく耕した土壌のように、環境が整っていれば、投資の成果が出るとも解釈できよう

▼一括交付金を活用した県の「ひとり親家庭技能習得支援事業」の1期生26人がことし3月、講座を修了した。低所得者を対象に、中国語の学習支援を通して昇任や転職を後押しする取り組みだ
▼受講生のうち4人は中国語検定準4級、10人は中国語の基礎力があるとみなされる4級以上を取得した。闘病中の受講生が、語学力を評価されて再就職を決めるなど成果が出ている
▼中国語圏からの観光客が増え、幅広い業種で中国語の需要が高まっている。県は就労につながるとして2期目の講座も開講した。一括交付金という「種」を、良い土壌にまいた好例といえる
▼一括交付金といえば、大型施設への投資を要請する動きが盛んだ。がん治療の重粒子線治療施設もその一つ。県医師会が主導して建設計画を進め、県からは一括交付金などを使い、約135億円の負担を想定している
▼この施設をめぐっては「離島医療の充実が先」などと一部のがん患者や公立・民間の医療関係者が優先度や採算性などを疑問視している。沖縄の地は高額医療の土壌に適しているのか。事業に着手する前にじっくり考える必要がある。