<金口木舌> 情報の洪水の中で


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 書店に行ったとき、楽しみの一つが普段と違う棚をのぞくことだ。探している小説などを一通り見て、建築や美術など専門書を眺める。時折、興味深い内容の本があり、新鮮な発見がある

 ▼しかし自ら動かずとも、興味関心のある分野の話題が集まってくるとすれば便利だ。そうした手助けとしてインターネット上の膨大な情報を自動で選び、届けてくれるアプリが人気という(5日付19面)
 ▼便利な時代だが、一つ気になることもある。関心がない分野には視野が広がらないことだ。知りたいニュース以外のことに触れる機会は減っていないだろうか
 ▼書店や新聞の良さは目に見える形で情報に触れられることだ。仕事や趣味と関係のない新たな世界への扉がある。例えば5日の朝刊には「世界一大きなトイレ」という記事が文化面にあった。どんなものだろう、どのくらいの広さだろう、好奇心が膨らむ
 ▼情報化時代に必要な能力の一つに「メディアリテラシー」がある。情報を主体的、批判的に読み解く力だ。専門的な知識、興味のある事柄への関心は大事だが、決して「情報量が多い」ことが能力が高いことにはつながらない
 ▼人は情報を数多く集めて満足しがちだが、肝心なのは玉石混交の情報の中から意味あるものを選び取る力だということだろう。両方を磨いてこそ時代に適応できる。機械任せにしていられない。