<金口木舌> 寄り道観光への一歩


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 辞書で調べると「素通り」は「立ち寄らずに通りすぎること」とある。北部地域ではシンポジウムのテーマになるなど、地元の観光の課題をこの言葉で言い表すことがしばしばだ

 ▼だが数字の上では、この表現は必ずしも当てはまらない。名護市の調査によると、市内の主なホテル、観光施設の2012年利用者数は過去最高だ。好調な沖縄観光に比例する動きが北部にもある
 ▼事実、複数のホテルを持つ女性経営者から「やんばる観光を表すものとして適当ではない」と聞いたことがある。では「素通り」の声はなぜ聞かれるのか。周辺の観光地のにぎわいに比べ、人の動きが弱い市街地の様子から生まれるのだろう
 ▼課題の多い市街地だが、新たな動きもある。中心部の市場で本年度から音楽会や琉舞が毎週末、披露されている。街中案内の商品化も夏以降に本格化する計画だ
 ▼全国を見回すと地域の魅力発信の成功例が見つかる。全市町村が登場する北海道の無料雑誌は増刷が間に合わないほど人気を集めているという。「一村一珍」が目玉企画で、街の有名人やグルメ、自然など幅広い話題が人を呼び込んでいる
 ▼観光施設は人々の好奇心をかき立てる。経済効果も大きい。だが地域に残る史跡や食文化も外来の客を満足させる資源になり得る。地元の地道な活動をまずは「寄り道観光」へつなげてみよう。