<金口木舌>サッカーがもたらす融和


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 王国ブラジルの「至宝」ことネイマールが2得点する活躍で、サッカーのワールド杯が幕を開けた。サッカーの歴史に新たな伝説が刻まれる瞬間を目撃できるか、この1カ月が楽しみだ

▼日本代表もきょう初戦を迎える。対するのはアフリカの雄コートジボワール。もちろん日本を応援するが、相手へのリスペクト(敬意)も忘れたくない。国家分断の危機を乗り越えた強者であればなおさらだ
▼コートジボワールは2002年から11年まで断続的に内戦が続いた。対立が続く中、2006年のW杯出場を決めたエースのドログバは、テレビを通して「武器を捨てよう」と国民に語り掛けた
▼ドログバの訴えが国民の絆を取り戻したとして語り継がれる。当時、民族や地域の違いなどで反目するコートジボワール国民が唯一、手を取り合ったのが代表チームの応援だったという。対立に終止符を打つきっかけはエースの願いだった
▼一方、沖縄からは知的障がい者サッカーの日本代表として、山内康勝さんがブラジルでの“W杯”に挑む。レベルは違っても志は同じだ。支えてくれた人々のため、自分の可能性を信じて前へ進む
▼W杯は時に「戦争」にも例えられるが、スポーツの本質は争うだけではない。プレーを通して「融和」や「協調」の精神が築かれるのも一つの魅力だ。世界最高の舞台で紡がれる物語に注目したい。