<金口木舌>調和か、開発か


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 サッカーのワールド杯が開幕し、世界中が沸いている。最高水準のパフォーマンスに息をのむ日々が続きそうだ

▼スポーツの晴れ舞台と言えば、東京・明治神宮外苑の国立競技場も注目の的だ。2020年東京五輪の主会場となる新スタジアムを建設するため、来月解体される
▼競技場は1958年に完成。東京五輪の名勝負に沸き、サッカーJリーグの開幕戦も行われた。日本のスポーツ史を語る上で欠かせぬ場所で、お別れの催しには約3万6千人が詰め掛けた
▼一方、跡地に建設される新スタジアムが論議を呼んでいる。「巨大すぎて周囲の景観と調和しない」と市民や建築家などから疑問の声が上がっている。当初案から壁の高さを75メートルから5メートル低くしたが、見直しを求める声が後を絶たない
▼作家の森まゆみさんも、五輪インフラ整備への巨額投資に異議を唱える。東京下町の良さを伝える地域雑誌を作ってきた森さんは「今ある資源を大切に使う文化こそが尊重されるべきだ」と指摘する。確かに右肩上がりの成長期と低成長の成熟社会のインフラ整備を同じ発想で-というわけにはいくまい
▼安倍晋三首相は施政方針演説で、五輪開催について「日本が新しく生まれ変わる、大きなきっかけにしなければならない」と述べた。視線の先には正規雇用の拡充、生活格差の解消などもあるのか。お手並み拝見。