<金口木舌> 働いて眠れる国に


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 スペインが眠れない。サッカーW杯敗退のことではない。他国より睡眠が1時間短いとの統計がある。睡眠不足は「標準時」が一因のようだ

 ▼欧州の西端にあるスペインは、本来なら英国やポルトガルと同じ時刻帯だが、1時間早い中央欧州の標準時を採用している。英国の午前7時がスペインでは午前8時。この時間、冬場だと真っ暗な中を出勤、登校する。逆に夏は夜10時前まで明るいため日照時間と体内時計がずれて夜型生活になってしまう
 ▼なぜ地理的に合わない標準時を使うのか。かつては英国標準時だったが、第2次大戦中の1942年、時のフランコ独裁政権が同盟国ナチス・ドイツに合わせて変更した経緯がある
 ▼議会下院は昨年9月、英国標準時に戻すべきだと提言した。生活習慣を改善し、労働生産性と経済の向上につながると力説している
 ▼一方、東洋の島国では「柔軟な働き方」をお題目に、長時間働いても賃金は成果で決める制度を導入する。残業代ゼロや過労死を懸念する声を受け、「年収1千万円以上の専門職」に限定したものの、タガはいつ緩まないとも限らない
 ▼秘密保護法しかり、集団的自衛権しかり。初めは限定条件を付けてもアリの一穴で崩れる恐れがある。憲法9条の縛りさえも自己都合で破ってしまう政権だけに、信用できるのか。働く者が安眠できない国にしてはいけない。