<金口木舌> 議会の品格


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 「やじは議会の華」ともいわれ、昔も今も「やじ将軍」なる人物がいる。古くは保守合同を成し遂げた自由党の三木武吉がその筆頭といわれる

 ▼三木のやじは寸鉄人を刺すところがあり「将軍」の名にふさわしいものだったとされる。現在はどうか。5月の国会では、安倍晋三首相が「うるさくて議論できない」と気色ばむ場面もあった
 ▼東京都議会の本会議では妊娠、出産への支援策をただした女性議員に「早く結婚しろ」「産めないのか」と心ないやじが飛んだ。女性の尊厳を否定するような言動には品性が感じられない。こうなるとやじとは言えない。明らかな人権侵害だ
 ▼やじが出たのは自民党会派の席からで、自民東京都連のホームページには千件を超える抗議が殺到している。意見が寄せられた掲示板を読むと、女性からの反発だけでなく支持者の失望も大きいことが分かる
 ▼16日に政府が打ち出した成長戦略は女性登用と子育て支援が柱の一つ。結婚、出産を考えている女性を支える制度はまだ足りない。それなのに首都の議会で、政府方針を真っ向から否定するような発言が飛び出しては話にならない
 ▼発言者がこのまま頬かむりするなら議会そのものの品格も問われる。何より女性議員が提起した政策論争が、無意味な発言で後景に押しやられることは不幸なことだ。都議会の自浄能力を見せてもらいたい。