<金口木舌>非戦の誓い


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 慰霊祭は白髪交じりの卒業生に加え、戦後生まれの人たちの姿が目立っていた。これは糸満市にある「開南健児之塔」の慰霊祭で何度か見掛けた光景だ

 ▼慰霊碑には沖縄戦で犠牲となった私立開南中学校の当時の在校生、卒業生が祭られている。開校からわずか9年、戦争は学びやを廃校に追い込んだ。戦がなければ、多くの優秀な若者を世に送り出したことだろう
 ▼私事で恐縮だが、開南中卒の叔父は西原辺りで戦死したと聞く。悲嘆に暮れた祖母が戦後、息子の亡くなった場所を何度も捜し歩いていたと最近知った。遺骨が戻らず、無念の思いを抱えて生きてきた遺族は沖縄では数え切れないほどいた
 ▼諦めかけていた遺族にとって一筋の希望は、戦没者遺骨の身元を解明するDNA鑑定だ。しかし、国の実施条件が厳しくDNA鑑定は進んでいない。遺骨収集団体ガマフヤー代表の具志堅隆松さんは「遺骨を遺族に返すことは国の責任だ」と強調する
 ▼慰霊祭に出席する遺族は、戦後生まれの世代が主流になっている。肉親の命を奪った戦争の悲惨を直接知る人々も年々減っている。それはDNA鑑定の機会の消失をも意味する。国は対応を急ぐべきだ
 ▼国は今、集団的自衛権の行使容認に前のめりだ。こんなご時世だからこそ沖縄から非戦の誓いを力強く発信したい。国策の犠牲者を二度と出してはならないと。