<金口木舌>平和と向き合う次世代


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 真っ青で穏やかな海をカヌーが静かに波を滑る。名護市瀬嵩集落の浜で毎週末、カヌー教室があり、自然と一体化した姿を見せる

 ▼一見、普通の体験ツアーだが、参加者にはある目的がある。視線の先の米軍キャンプ・シュワブ。その沖に計画されている新基地建設反対を訴える海上行動に参加することだ
 ▼そのツアーに最近、県内学生の姿が増えているという。カヌーを通して「宝の海」の存在に気付いた面々だ。集会でこぶしを上げることには距離感があったという若者らが、環境の視点から「基地NO」の声をオールひとかきに込めようとしている
 ▼沖縄は昨日、各地でみ霊への祈りが捧げられた。毎年、慰霊の日に前後して平和学習が行われるが、講演会などで聞くだけではなく、自主的に平和と向き合おうとする若い世代の取り組みも見られた
 ▼名護高校では生徒が演劇を披露した。元鉄血勤皇隊員の霊が現在の高校生に「のりうつる」という奇抜な内容だったが、失った命を悔やみ、親孝行の夢を実現しようとする同世代の思いは共感を生み、涙する生徒もいた
 ▼琉大の学生が平和学習支援の会社を立ち上げた事例もある。修学旅行向けに宿泊先で沖縄戦や基地問題について討論会を行うという。環境や観光、家族への思いなど、さまざまな側面から平和を「自ら考える」若者らの広がりを願う。