<金口木舌>会社を継ぐ人


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 1972年の日本復帰後に創業した企業の代替わりが進んでいた5年前、事業承継の取材に関わったことがある。最も苦労したのは、取材に応じてくれる企業を探すことだった

▼国内の資本金1億円未満の企業の96%が同族経営だ。沖縄も同じ傾向だろう。が、親が一代で築いた企業であっても、子どもが別の職業に就いていたり、家業を継ぐ意思がなかったりして後継者がいない場合がある
▼その場合は社員や外部の人材を社長にするか、事業を譲るなどの企業の合併・買収(M&A)が一般的だ。県内でも実例があるのだが、取材を申し込んだ企業はなかなか首を縦に振らない
▼理由を事業承継のコンサルタントに尋ねてみると「沖縄は会社を他人に譲ることへの抵抗感が強い。譲るくらいだったら自分の代でつぶすと言う社長も多い」と解説した。会社は自分の物という意識が強いのだろうか
▼日本の同族企業の代表格サントリーが外部から社長を招く。人口減少や若者の飲酒離れで国内市場が縮小する中、海外進出の加速を狙う。新しい血を入れて、思い切った展開を目指す意思なのだろう
▼新社長に就く新浪剛史氏は「(サントリーの精神)『やってみなはれ』はイノベーション(革新)。これを世界中でやっていきたい」と意気込む。酒造業界にどんな革新を巻き起こすのか。新社長の手腕に注目したい。