<金口木舌>メッキの言葉、本物の言葉


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 「最後は金目でしょ」と暴言を吐いた石原伸晃環境相が23日、福島で謝罪行脚をした。「被災者の心に寄り添いたい」と語ったが、佐藤雄平知事からは「もう3回も4回も聞いている」とたしなめられた。メッキの言葉は見透かされる

▼同じ日、摩文仁でも一国の首相が同じ言葉を発した。「沖縄の方々の気持ちに寄り添いながら」基地負担を軽くするという。辺野古の立ち入り禁止水域を拡大し、7月のボーリング調査強行に向けて虎視眈々(たんたん)と準備しているのに、言動が正反対だ
▼首相はこうも言った。「沖縄の人々に刻み込まれた心の傷はあまりにも深く」後世の者が「痛みを分かち合えると思うことは不遜だろう」と
▼その1時間前、沖縄師範健児之塔での慰霊祭。戦中の師範学校校長・野田貞雄さんの孫、謙二さんが沖縄の傷に言及した。4年前から参列し、生々しい傷痕に心を痛めてきた。「今後も沖縄戦の傷痕をもっとよく知り、その傷を自分の傷として見詰め直す努力を続けたい」
▼たとえ難しくても痛みに近づこうと力を尽くすか、初めから諦めるかでは天地の開きがある。しょせん人ごとか、わが身に引き寄せて考えるか。沖縄と向き合う姿勢の違いと言えよう
▼言葉には魂が宿る。「寄り添う」「理解する」という言葉は、心が伴ってこそ相手に響く。字面だけの美辞麗句の大安売りでは、聞く側の心は動かない。