＜金口木舌＞１８歳の壁

　２０１０年末から一時、「タイガーマスク現象」が全国に広がった。漫画「タイガーマスク」の主人公を名乗る人物が各地の児童養護施設にランドセルや現金を届けたのだ。県内の施設でも同様の例があった

▼その児童養護施設をめぐり、意外に知られていないのが「１８歳の壁」だ。児童福祉法上、入所者は高校卒業と同時に退所しなければならない。実親の元に戻れない若者は、生活費や学費を全て自分で稼ぐことを余儀なくされる
▼未成年という理由でアパート契約も敬遠されがちだ。１人暮らしの人は世帯主になるから、税の納付も義務付けられる。１０代で経済的に不安定なままの退所は、貧困につながる危険をはらむ
▼児童養護施設だけの問題でもない。国が公表した日本の子どもの貧困率は１５・７％。６人に１人の割合だ。国連児童基金（ユニセフ）の統計でも先進３５カ国中９番目に高い。日本は「子どもの貧困大国」なのだ
▼貧困と学力の相関関係が指摘されて久しい。進学とその後の人生の経済力との相関も、例外はあっても確実に存在する。子どもは生まれてくる環境を選ぶことはできない。自分に責任のないことで人生を左右されるのは、あまりに理不尽だ
▼返還義務のない就学支援や自立支援。考えるべきことは多い。貧困の連鎖を防ぐため、タイガーマスクならずとも大人がやるべきことはたくさんある。