<金口木舌>沖縄らしい言葉


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 慰霊の日に糸満市の平和の礎を訪れた際、60代の先輩から「ウランダー(オランダ人)が取材しているね」と声を掛けられた。なぜオランダ人と分かるのか尋ねると、「外国人のことだよ」と笑われた

▼沖縄では戦前、西洋の外国人一般を指して「ウランダー」と呼んでいた。名護市屋我地にオランダ墓という古い墓があるが、葬られているのは1846年、運天港に立ち寄ったフランス艦隊の水兵2人だ
▼同様に今ではあまり使われない言葉に「カルテックス」がある。米軍政下の沖縄で石油供給権を独占していたから給油所の代名詞となったが、復帰後もこう呼ぶ人は多かった
▼一つの代名詞が一般名詞化し、総称の意味を持つ。しまくとぅばではないが、失われつつあるこのような言葉の背景を踏まえると、沖縄のおおらかな気質や歴史が感じられ、味わい深い
▼本紙は毎週月曜の第2社会面で琉球新報、沖縄セルラー連携企画の二者択一アンケート「けんみんボイス」を連載している。「沖縄が好き?」「うちなータイムは健在?」。沖縄らしさがにじみ出る質問や回答が楽しい
▼沖縄戦の体験者が減る中で教訓を後世に伝えることに責任を感じるが、一方で消えゆく言葉にさみしさも覚える。言葉そのものを使うかどうかはさておき、知識としては残しておきたい。沖縄らしさの継承にもつながる。