<金口木舌>沖縄の海の将来


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 各漁港にある直売所は県民にとって沖縄の海の恵みの豊かさを実感する場になっている。足しげく通ううちに気付いたが、併設する食堂には外国人の姿がめっきり増えている

▼箸を上手に使い、新鮮なうちなーむんを頬張る姿は珍しいことではなくなった。それを裏付けるように外国人観光客数は5月、単月として初めて9万人を突破した。沖縄の食は観光を押し上げる要因の一つといえよう
▼一方、モズクや海ブドウなど特産品が売れない-という現実を突き付けられたのが2001年米中枢同時テロ直後の沖縄だ。入域客の激減は観光業をはじめ、生産加工業にも大きな影響を与えた
▼リゾートホテルが立ち並び、飲食店や土産品店など観光への依存度が高い恩納村も例外ではなかった。商工会関係者らは「自慢の特産物の収益が止まった」と振り返る
▼この苦境がホテルと地域の距離感を縮めるきっかけとなった。観光施設や商工会、行政などが連携し県外での独自の招(しょう)聘(へい)活動を続けた。観光再生を旗印に1次、2次、3次産業の一体感が生まれた
▼観光と平和の密接さもまた、あのテロで多くが痛感したことだ。沖縄の海は観光や食、ものづくりなどで成長へと導いてくれる。今、名護市辺野古で始まろうとする新基地建設へ向けた海の埋め立て。次世代へ残すべきものは何か、沖縄の魅力をいま一度考えたい。