<金口木舌> 活性化のお手本の村にて


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 若葉の季節に高知市土佐山を訪れた。山に張り付くように集落がある。静かに水をたたえた棚田と川のせせらぎ。日本の山村の美しさを堪能できる景色だ

 ▼地域活性化の手本といわれる。第三セクターで造った宿泊施設は風景と産物を生かし「何もないことが売り」。予約の取れない宿として有名だ。有機栽培のショウガやユズは人気がある。だが人口減少は止められない
 ▼高知市と合併後、人口は10年で2割減った。若者は高校から市の中心部に出て戻らない。地域おこしの中心は50~60代で次世代につながらない。沖縄の離島も同じ悩みを持つ所も
 ▼若年女性が今の半数以下になり、全国896もの自治体が「消滅」するという日本創成会議の試算は全国に衝撃を与えた。会議の一員である加藤久和明治大教授は今の日本を「人口のブラックホール化」と称する
 ▼地方では高齢者の実数が減っている。介護などの職がなくなり、若者は職のある都市に流れ、地方の街は消える。しかし東京は安心して子育てする環境ではない。結果、日本の人口は暗い穴に吸い込まれるように減る
 ▼2025年には人口減少に転ずるという沖縄も例外ではない。県は人口150万人を目標に掲げるが、それには北部や離島の過疎化を食い止め、若者が子育てしやすい環境を地道につくるしかない。特効薬はないが、取り組み続けたい。