<金口木舌>自然体験のすすめ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 梅雨が明け、セミの鳴き声が目覚まし代わりになるこの時期、木々や草花、海、川など自然の色が一段と鮮やかさを増す。金武町や伊是名島、石垣島など米どころでは黄金色の稲穂が風にそよぐ

▼10年ほど前、20年ぶりに田んぼを復活させた名護市嘉陽区でも、集落裏手の一角で一期作の収穫期を迎えた。その中に慣れない手つきながら笑顔で汗を流す若者たちがいた
▼地域を通して人と自然とのつながりを学ぶ県内の学生グループで、初めて稲作に挑戦した。リーダーの阿野翔大さん(琉大3年)は昨年秋から半年間、地域で暮らし、かつては「美田」と呼ばれる風景が広がり、盛んに米作りが行われていたこと、「稲作節」が今に残ることを教わった
▼収穫見込みは二十数キロと小さな田んぼでの営みだが、得たことはそれ以上の重みがあった。住民との触れ合いをはじめ、農業や食の考え方など地域目線に立った活動は若者たちを刺激し、自らの人生に対する考えにも変化をもたらした
▼兵庫県で生まれ、恩納村で育った阿野さんは「農業を生かし地域を支えたい」と卒業後は、やんばるでの暮らしを望む。教員志望だった山本芽依さん(名桜大3年)は、自然体験学習を広げる活動に夢を抱くようになったという
▼自然との「対話」は心に何かを芽生えさせてくれる。この夏、自然体験をしてみてはいかがだろう。