<金口木舌>ナーベーラーを全国区に


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 〈柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺〉で知られる俳人、歌人の正岡子規。結核を患い34歳で早世した。命が尽きる12時間前に詠んだのはヘチマだった。絶筆3句といわれる

▼〈糸瓜(へちま)咲て痰(たん)のつまりし仏かな〉〈痰一斗糸瓜の水も間にあはず〉〈をとゝひのへちまの水も取らざりき〉。病床で筆を執った後、昏睡(こんすい)状態に陥ったという(長谷川櫂著「子規の宇宙」)。明治のころ、ヘチマのつるを切って取った水は痰切りの薬として重宝されていた。その命の水でも及ばない病状を悟り、自らを客観的に見詰めた句だ
▼子規ほどではないにせよ、ヘチマは県民にとっても滋養の夏野菜だ。ナーベーラーと呼んだ方がしっくりくる。暑さが増すこれからの季節、ゴーヤーと並んで欠かせない
▼個人的には「冷やし中華始めました」の貼り紙よりも、食堂の「ヘチマあります」に夏の到来を感じる。ナーベーラーンブシー(みそ煮)の、とろっとした食感とほんのりとした甘みは絶品だ。他府県で食されていないのがもったいない
▼大半が水分だが、体を冷やす働きは夏ばて予防にもってこい。ミネラルやビタミンは美容健康にいい。全国にアピールできる付加価値は備えている
▼「ナーベーラーの日」制定や料理法の浸透で、もっと売り込めないものか。ゴーヤーの成功例に学び、「ナーベーラー」の名も実も日本中に定着させたい。