<金口木舌>学ぶ意欲はぐくむ授業


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 人の形をした大きなビニール袋が体育館の天井に舞い上がった。2月、浦添市で開かれた科学教室。ビニール袋に温めた空気を流し込むと、外気との温度差で上昇する。熱気球の原理を実験した

▼講師は、小学校教師歴28年で、現在は「たのしい教育研究所」所長の喜友名一さん。「袋はどうなると思う」。喜友名さんの質問に、子どもたちは目を輝かせて仮説を立てる。実際にビニール袋が宙に舞うと、会場は歓声に包まれた。教師と生徒で創る「生きた授業」を実感した
▼昨年度、病気で休職した県内教員の数は過去最多の420人に上った。精神疾患による休職者が4割を占める。授業に情熱を注ぐどころでない教師が増えている。深刻な事態だ
▼沖縄は1人親世帯や共働きが多い。中には本来家庭でやるべき養育に時間を注げない親もいて、教師が細かい生活指導に追われ、多忙化に拍車が掛かっているという指摘もある
▼国語教育の第一人者の大村はまさんは著書で「勉強する苦しみと喜びのただ中に生きているのが子どもたち。子どもたちと同じ世界にいたければ、自分が研究し続けていなければなりません」と教師に説く
▼教員の多忙化解消は急務だ。地域ボランティアを活用し、生活指導を支援してもらう方法もある。教師が生き生きと教壇に立つ姿は、子どもたちの学ぶ意欲を引き出すはずだ。